X月X日テクノイベント レポート

XXは、「人がサーっといなくなったら怖い」と言っていた。「長いDJ歴に裏打ちされた、経験豊かで安定感のあるプレイと選曲が特徴」とプロフィールにあるDJでもそんなふうに感じるのか、と意外に思った。
 
誰かがDJブースに上がって来たのが見えたが、それがXXなのかは目が遠くて分からなかった。XXのプレイと音を間近で体に入れたいと強く思ったので、そっと前方のスピーカーの前に入ってみた。
 
前のDJがアクトを終えて、XXの手を強く握った。二人の長きに渡るDJ人生の様々な思いが交ざった気がして、感動した。カメラマンの女の子も、その瞬間を逃すまいと必死に写真を撮り出す、貴重な瞬間だった。
 
前のDJが完全にブースを離れた。メロディのないドラムだけの部分で、周りの人が「どんな音が来るのか?」と期待を込めて、我慢しきれずに叫んでいた。そこでQuautum Paradoxの幻想的な音がかかったとき、私は「あぁーこれはヤバイな」と思ったし、周りの人もとても気持ちよさそうに踊った。硬さと柔らかさのあるこの選曲は、絶対に前のDJではできない。XXの人柄が、曲を選んでいると思った。
前曲の音が消え、焦らすように音が小さくなると、オーディエンスは簡単に操られて、掛け声の数が多くなった。次の章節で爆音がかけられると、音にヤラれてしまった人から複数の悲鳴のような声が上がった。
朝5時とは思えないほどの人数が集まって、それぞれの「あぁヤバイ」が生まれていた。Jonas KoppのVostokの時は、テクノの現場ではあまり見られない手拍子さえ起こっていた。
そんなふうに、XXの選曲はほとんどが、武骨なリズムに色彩のあるメロディが入っている。ガシガシと攻撃的でありながら、自然と体の揺れる幻想的なものだった。XXが音をためて焦らすたびに、皆も簡単にそれに操られていた。
XXのアクトは、プロフィールの文章がまさに的を得ていて、DJ歴が長くないと出せない安定感、攻撃性、そしてあざとさを持った、人に甘いため息をつかせるものだった。