X月X日テクノイベント レポート

XXは、「人がサーっといなくなったら怖い」と言っていた。「長いDJ歴に裏打ちされた、経験豊かで安定感のあるプレイと選曲が特徴」とプロフィールにあるDJでもそんなふうに感じるのか、と意外に思った。
 
誰かがDJブースに上がって来たのが見えたが、それがXXなのかは目が遠くて分からなかった。XXのプレイと音を間近で体に入れたいと強く思ったので、そっと前方のスピーカーの前に入ってみた。
 
前のDJがアクトを終えて、XXの手を強く握った。二人の長きに渡るDJ人生の様々な思いが交ざった気がして、感動した。カメラマンの女の子も、その瞬間を逃すまいと必死に写真を撮り出す、貴重な瞬間だった。
 
前のDJが完全にブースを離れた。メロディのないドラムだけの部分で、周りの人が「どんな音が来るのか?」と期待を込めて、我慢しきれずに叫んでいた。そこでQuautum Paradoxの幻想的な音がかかったとき、私は「あぁーこれはヤバイな」と思ったし、周りの人もとても気持ちよさそうに踊った。硬さと柔らかさのあるこの選曲は、絶対に前のDJではできない。XXの人柄が、曲を選んでいると思った。
前曲の音が消え、焦らすように音が小さくなると、オーディエンスは簡単に操られて、掛け声の数が多くなった。次の章節で爆音がかけられると、音にヤラれてしまった人から複数の悲鳴のような声が上がった。
朝5時とは思えないほどの人数が集まって、それぞれの「あぁヤバイ」が生まれていた。Jonas KoppのVostokの時は、テクノの現場ではあまり見られない手拍子さえ起こっていた。
そんなふうに、XXの選曲はほとんどが、武骨なリズムに色彩のあるメロディが入っている。ガシガシと攻撃的でありながら、自然と体の揺れる幻想的なものだった。XXが音をためて焦らすたびに、皆も簡単にそれに操られていた。
XXのアクトは、プロフィールの文章がまさに的を得ていて、DJ歴が長くないと出せない安定感、攻撃性、そしてあざとさを持った、人に甘いため息をつかせるものだった。

Jay Turio-フォークソングもトランスに?多彩なアイデアを信頼感のあるプレイで形にするフランス人DJ

Jay Turio-フランス・ストラスブール出身。トランスDJ。日本を拠点に、渋谷のSureeやNagomixなどのイベントに出演。BPM140程度で美しいメロディの正統派トランスミュージックが強み。楽曲制作も行う。
 
①DJをはじめたきっかけは?
 
昔からエレクトロミュージックが好きだったので、DJを始めるのは自分にとって自然なことでした。アナログレコードもかっこいいなと思い、20歳の時にターンテーブルを買いました。
 
②曲をどうやってDigしている?
 
ビートポートのチャートニュースで世界の最新の人気曲のチェックはします。ジャンルはトランスの他にはプログレッシブハウス、メロディックテクノをよくチェックしますね。ポッドキャストも聞き流したりします。
 
③よく行くクラブは?
 
トランスイベントを定期的に行なっている渋谷のNagomixですね。あとは、恵比寿のSureeで、毎週月曜日(※第一月曜日を除く)に開催されている、誰でもDJができるオープンスペースパーティーで練習しています。
 
④好きなアルコールは?
 
ビール!生ビール!
 
⑤今後はどんなことがしたい?DJ以外でも。
 
Pixel Artがしたいです。日本では「ドット絵」って言った方が有名ですかね。
僕はYouTubeに、旅行先の紹介動画をアップしているのですが、そこに差し込むドット絵を入れたい。けれど、イラストに関しては未知なことが多く、試行錯誤してます。例えば、自動でドット絵が簡単に作れるアプリなんかもあるんですが、ポケモンドラクエのように、1マス1マスをちゃんとキャラクターが歩くように作りたいんです。あと、自作の音楽もBGMとして付けたい。けれど、そこまでできるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。
 
-日本に魅せられ、独学で日本語を習得し、定住しているJay。彼の紡ぎ出す音は、数十年前のフォークソングをトランスMIXするなど非常に多様なアイデアで彩られ、人をトランス状態にさせる激しさを持つ。物腰柔らかな彼の外見からは想像のつかない攻撃的な音を、Mixmagでチェックしてみてはいかがだろう。

MORISAMAーAviciiの死をきっかけにDJ教室の門を叩いたテクノDJ

埼玉県出身のテクノ・ハウスDJ。ライター活動、LINEスタンプ作成なども行う。
 
①DJを始めたきっかけは?
 
Aviciiが亡くなったことです。
2014年にドイツに留学したのをきっかけにパーティーミュージックにはまっていて、DJ自体はその頃から「やってみたいなぁ〜」と思っていて、DJに嫉妬を募らせていました。でも、私は見ての通りパリピでは無いですし、キャラじゃないからやってはいけないと思っていました。
そんな鬱屈した思いを抱えていたある日、2018年の4月末、Aviciiの訃報を聞きました。
その頃には、「EDMは元気な人の音楽だ」、という偏見でAviciiはあまり聞かなくなっていましたが、彼の死は予想外に大きなショックでした。曲を聴き直してみたら、どれも泣けるし、ノれるし、素晴らしい。Aviciiは、私の青春そのものでした。そんなに好きだった人なのに、来日もしていたのに、わたしはAviciiのDJを生で見なかったことに、とても後悔しました。
「まあ、いつか見れるだろう。もっと稼いで余裕ができたらイベントに行けるだろう」
そう思っているうちに、亡くなってしまったのです。「好きなものはずっと存在するわけじゃない」と分かって、これはDJを始めなければいけない、と思いました。
しかし、わたしは転職したばかりで貯金がありませんでした。「DJスクール 格安」で検索したところ、渋谷のWhite Space Labというところで、入会金無しで1回1500円で指導してもらえることを知り、足を運びました。
 
②ジャンルはテクノ・ハウスですね。
 
はい。わたしは、DJを始めるまで、自分が何というジャンルが好きなのかよく知りませんでした。DJスクールに通い出し、DJ仲間ができて、わたしの好きな曲たちを聞いてもらったら、どうやら「ディープハウス」とか「テックハウス」、「メロディックテクノ」が好きなんだと分かりました。らしいです。メイシオ・プレックスのように、鋭い四つ打ちに、綺麗なメロディが入っている音楽が好きです。
 
③世界でいちばん好きなDJは?
 
やっぱり、Maceo Plexですね。
 
④好きなアルコールは?
 
「炭酸」と「クセのある植物」と「柑橘系」が好きなので、モヒート。
牛乳系の濃厚な甘みが好きなので、カルーアミルク
 
⑤曲をどうやってDigしている?
 
Youtubeで、「Boiler Room」や「Mixmag」、「Tomorrowland」などの音楽イベントの1時間くらいのmixを聞き流して、「なんだこれは!」という曲を見つけたら曲名をYoutubeで再検索して、一曲まるごと聴いて良かったらBeatportかJunoで買います。
 
そういえば、とても悲しいことがあって、メイシオ・プレックスの曲で、「なんだこれは!」というのが2曲あったんです。けれど曲名を探してみたら、リリースしていませんでした。そのBoiler Roomでしか聞けない曲だったのかと思うと非常に悲しいです。ぜひリリースして欲しいです。